Categories
BLOG コーチングといううつわ

コーチング「戦略」との付き合い方

コーチングをしていると、しばしばコーチングの「戦略」という言葉に出会います。

私は、この「戦略」という言葉、ちょっと苦手です。
硬いというか、強いというか、なんとなく身構えちゃいますね。

苦手意識の心当たりはふたつ。

コーチングを学び始めた時、一番最初に学んだのは「聴くこと」。傾聴でした。
これが基本で、最重要。
そして、普段の自分は、いかに相手の話を聴いていないのか思い知りました。
相手の話を耳に入れながらも、
「次に自分は何を話そう」「私だったらこうするけどな」「この後の予定なんだっけ?」
まあ、色々なことを考えている。
だから、「戦略」なんてあれこれ考えてたら、聴くことができなくなっちゃうんじゃない?という恐れがひとつ。

もうひとつは、私が直感と適応性で進んでいくタイプであること。
先々を見据えるよりも、流れに身を任せ、その瞬間瞬間に対応するのが好きです。
「戦略」という言葉からイメージする、複雑なシミュレーションを重ねて最適な判断をするようなアプローチは苦手。
苦手なことをやろうとすると、そのことに一生懸命になってしまって、ますます聴けない。

そういう苦手意識から、「戦略」にはできるだけ近付かずに過ごしてきました。

ところが、先日、またこのコーチング「戦略」という言葉に出会いました。

コーチングの資格の申請書類のひとつで、提出する審査用セッションのコーチング「戦略」について書け、とのこと。
うーん、正直、「戦略」と申されましても…という感じなんだけど、審査用の大事な資料だから適当なことは書けないし、参ったな。
それに、これから先ずっとこのコーチング「戦略」って言葉はついて回るだろうから、このあたりで付き合い方を考えるのも良いかもしれない。
そう思って、私のメンターコーチ(コーチング力向上のためのコーチ)に相談しました。

私のメンターコーチは経験豊富なMCCの方ですが、実はその方も「戦略」って言葉は好きではないそうです。
やっぱりそういう方、一定数いるみたいですね。

でも、その方が言ってくださったことは、
コーチング「戦略」を問われた時に聞かれているのは、「どのような意図を持ってコーチングしているのか?」ということだ、ということ。
つまり、方向性や姿勢のようなものだと捉えて構わないということです。

コーチがクライアントと関わる時、瞬間瞬間で、様々な関わり方の選択をしています。
戦略とは、その様々な選択の意図や方向性であり、どのようなことを思い、そのような関わり方を選択したのか、ということなのです。
クライアントの個性や状態、テーマや求めているゴール、今この時のクライアントに個別対応するために、コーチは関わり方を選択しているはずなのです。

そうか、たしかにそうであるはずだ。私もそういうことをしているはずだ。
私はそう思いました。

でも、改めて「では、このセッションのコーチング戦略は?」と聞かれると、どうもよくわからないなーというのが正直なところなのです。
どの局面でも、選択肢は色々あったはず。
でも、その色々なカードの中から、私は一瞬でシュッと直感的に選んでいる。
だから、その一瞬に起きた意図がどういうものなのは、自分ではよくわかっていない。

そんな感じなのです。

私が正直にそう伝えると、メンターコーチは言いました。
選ぶのは直感で構わない。
ただ、どのような選択肢から、どういう意図でそれを選んだのか、後付でいいから言語化できることが大切だ、と。

そう、選択するその時は、無理なく自分らしく、自分の強みを最大限に発揮できるように振る舞えばいいのです。
そうすることが、クライアントへの貢献につながるはず。
自分が今感じとっている流れを信じて、直感に従えば良いのです。

必要なのは、振り返って観察し、言語化していくこと。
将棋の感想戦みたいなものだって言ってました。
直感による選択の結果、何が起きたのか、それによってゴールにはどう影響したのか。
それを言語化できれば、なんとなくの方向性や期待していた展開という形で、実は意図=戦略が存在していたことがわかってきます。
そのプロセスでは、取らなかった選択肢、見えていなかった可能性にはどんなものがあったのか、そんなことも検討できます。

資格申請準備の一環で、このコーチング戦略の他に、セッションログの作成をしました。
セッションで交わされたやり取りを、一言一句文字に起こします。
文字になったやり取りを少し俯瞰して眺めてみると、たしかにこの時は複数のカードから選択をしているし、その時にはこういう意図が存在していたんだな、ということが見えてきました。
他のセッションと比べてみると、話し方や相槌の打ち方、話すペースが違うし、関わり方やセッションの進め方も全然違う。
意識できていなかったけれど、ちゃんとその時のクライアントに合わせた選択をしていました。
こういう振り返って言語化していくことは、取り組まないとできるようにならない、トレーニングなんだなと思います。
そして、言語化によって客観的に見えるようになると、自身の可能性を広げるために、何に取り組むことができるのかを考えられるようになります。

これは、コーチング力向上に限った話ではないですね。
「体験を振り返って学習することが大切」という、極めてコーチング的な話ではあるのですが、振り返らずにやりっ放しにたり、新しいインプットばかり求めたりしていたかもなぁと、改めて反省しました。

止まって、観て、気づく。
そういうところに、いつも戻ってきます。

私が、コーチング「戦略」との付き合い方として、改めて決めたこと3つ。

まず、自分の持っている選択肢を増やすこと。
そのために、振り返りを通して、セッションで起きていることを言語化していくこと。
色々なコーチのセッション、色々な人とのセッションが選択肢を広げるチャンス。
うまくいかない時、合わない人、試行錯誤した時こそ、その経験から学習すること。

それから、直感の働きやすい状態にすること。
直感は大事。
だから、直感を妨げるものがない、ピンと来やすい自分であること。
そのために、自身を整えること。

そして、直感を作っているものを豊かにしていくこと。
その人の直感とは、何でできているのか?
きっとそれは、その人といううつわに堆積したものでできているのだと思います。
堆積したものとは、知識や経験、スキルはもちろんのこと、受け継いでいる資質や動物としての勘も、あの時誰かが話していたことやこれまで見てきた景色、触れてきたもの、そういうものです。
そういうものに後押しされて、直感は働くのではないかと思います。
でも、それは何でもいいわけじゃないと思います。
血肉の通った体験とでも言いましょうか。
きっとこの話も、何かの記事で読んだぐらいじゃ堆積されないかもしれません。実際に書いたり話したり体験したりしないと。
でも、何かの拍子にハッと深く刻まれることもあるかもしれません。
私は、私のうつわには、できるだけ自分が素晴らしいと思えるもの、価値があると思えるもの、美しいと思えるものを堆積していきたいなと思っています。
そのために何ができるのか、考えていかなきゃいけないなと思っています。

コーチングとは長い付き合いにしていきたいと思っているので、これからも、そういうことを愚直に取り組んでまいります。