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BLOG 本のトビラ

谷川俊太郎『みみをすます』

「本はトビラ」
よく耳にする言葉ですが、たしかにそのとおりだと思います。
本によって、開かれる世界、覗き見る世界、存在を感じられる世界があります。

そして、みみをすますラボの1枚目のトビラのお話。
やっぱり、この本のことを書かねばなりません。

谷川俊太郎さんの詩集「みみをすます」です。

今、奥付を確認して知ったのですが、初版は1982年6月30日発行だそうです。
私と同い年。私が生まれる1ヶ月ほど前に発行された本です。

「みみをすます」「えをかく」「ぼく」「あなた」「そのおとこ」「じゅうにつき」という6篇の詩が収録されています。

ABOUTにも書いたのですが、”みみをすますラボ”という名前は、この「みみをすます」という詩から名付けました。

昔からこの詩集が大好きで、絶対にこの名前を付けるって決めていた!という話だったらきれいなんですけど、実際はそうではありません。

約2年前、私がコーチングを始めたばかりの頃のことです。

コーチングスクールで学び始めたのはいいのだけど、コーチングは実践しないとできるようにならない。
スクールの仲間たちは、部下や同僚など、自分が働いている会社内で受けてくれる人を探して、練習兼コミュニケーション向上に役立てている人が多いみたい。
だけど、私はもうすぐ会社を退職する予定だし、会社の外でクライアントになってくれる人を探さなければならない。
そういうことが目の前の課題になっていた時期でした。

「ま、やるしかないし、なんとかなるでしょ」という気持ちだったんですけど、クライアント候補の方に声をかけさせていただくときに、名前があったらいいなと思ったんですよね。この自分のコーチング活動の屋号が。
だって、屋号があったほうが、相手の方も「ちゃんとしてる」印象を受けてくれそうです。
それに、自分をその気にさせるためにも、早めにそういう「それっぽいもの」があったほうが良い気がしたんです。

色々考えたと思います。といっても、実はあまり詳細は覚えていません。
「コーチング」って名前に付けちゃうのは、わかりやすいけど、他の人と被りそう。
そもそも、コーチングといっても、学び始めたばかりで一体どんなものなのか、どんなことができるのかすら、イマイチわかっていない。
どうやら「聞くこと」が大事っぽいし、それは私も大事にしたい気がする。
聞くこと、聴くこと、うーん…

そんなことを考えながら、忙しい日々を過ごしていました。
秋から冬に移る頃でした。枯れ葉が舞っていたのを覚えています。
朝、子どもたちを保育園に送っていった帰り道。前後に子どもを乗せられるごっつい電動自転車で、目黒川沿いの下り坂をすいーっと滑り降りていた時。
ふと、「”耳をすます”はどうだろう?」と、考えが降ってきたのです。

今、書きながら気づきましたが、これ、絶対にスタジオジブリ「耳をすませば」の影響を受けてますね。坂道と自転車だなんて、完全に聖司くんじゃないか…

でも、その時はジブリの影響には気づかずに、家に帰ってから(在宅勤務だったので)「耳をすます」って検索したんです。
そしたら、この本が出てきたんですね。

これが、この本との出会いです。

検索結果で、この本のカバーイメージを見た時、「これに決めた、これがいい」と思いました。
もちろん、大至急購入しましたよ。
そして、実際に詩を読んで、「これだ」という確信を強めました。

“みみをすますラボ”は、この詩がありきで生まれた名前ではないけれど、この詩があったから決めた名前です。
そして、この詩の存在は、その後のみみをすますラボと私の進む方向性にも大きく影響を与えていると思います。

今でも、この本に触れ、この詩を読むと、
大きなものに背中を押されて、「このまま進めばいいんだ」と言ってもらえている気がします。

この本は、みみをすますラボの1枚目のトビラです。
今、改めて振り返ってみて、このトビラとの出会いに心からの感謝の気持ちでいっぱいです。