4月。新しい年度、新しい学期のはじまりの時期。
変化を追いかけて、新たな環境や動き方に一生懸命馴染んでいるうちに、あっという間に1ヶ月が過ぎていきました。
この4月、私には大きな変化はないのだけれど、今年度から大学で博物館学芸員の資格課程を追加で取り始めました。
とりあえずテキストを読むところから始めたものの、これが思いのほか時間がかかる。3冊を読み終えて、ようやく適度に読み飛ばせるようになってきました。
新たなことに慣れないうちは、どうしても慎重になりがちなもの。何が大事で何はそうでもないのかがわからない不安から、すべてをきちんと押さえなきゃいけない気がしてしまう。そういう時期は、気持ちのうえでの負荷や時間もかかるし、よくわからないから楽しくもないし、しんどい気持ちをじっと我慢して進めていく。
そうしているうちに、「ここはポイントだ」とか「ここは適当でいいな」とか「必要になったら読み返せるようにここに書いてあったことだけ覚えておこう」といった強弱の付け方がなんとなくつかめてくる。
もちろんそのやり方は引き続き調整が必要だけど、ここまで来れば、なんとなく進めていける気持ちがわいてくる。
じたばたして、なんだか疲れた1ヶ月でした。
もう1ヶ月以上前のことだけど、3月に、東京・上野にある国立西洋美術館で「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?――国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ」という企画展を見てきました。
弓指寛治さんのインスタレーションが見たくて。(本当にすばらしいです。見逃してはいけない!会期は5/12まで。)
その企画展の展示室に入る前のロビーのような場所では、壁に設置されたモニターに、30分ほどのインタビュー映像が流されていました。
それは「補遺:保育士へのインタビュー」というこの企画展に参加されている田中功起さんの作品の一部なのだけど、私は展示室にも入らず、腰を据えてこの映像に見入りながら、なんだかぽろぽろと泣けてきてしまいました。
保育士さんに保育への思いや理想と現実について自由に語ってもらうという内容で、たしか3人の、異なる園で働かれている保育士さんがお話されていました。
シンプルで誇張のない、静かで記録的な編集だったように思います。
その保育士さんたちのことばを受け止めながら私のなかで起きていたことは何だったのか、今でも正直よくわからないのですが、見終わった後、ただじんわりと「ケアされていたのだなぁ」という思いが残りました。
特に、ひとりの保育士さんが「自分への誇りを持てるように育ってほしい」と語ったときに、それは子どもたちへの思いであると同時に、親への思いでもあり、保育に関わるすべての人たちへの思いでもあるように伝わってきました。
私の長男が0歳で保育園に入園したのは2015年の4月のこと。
今年で次男が年長になったので、この1年は、保育園とともに生きた私の10年間のラストイヤーになる予定です。
今でこそかなりいい加減に暮らしていますが、最初は何年も本当に精一杯でした。
手の抜きどころなんてわからなかったし、何も適当になんてできなかった。
ずっと一生懸命で緊張していたし、自分が疲れていることに気づかなかった。
ワンオペでしょっちゅう身体を壊して、40度を超える熱が出ても、「保育園に子どもを連れて行きさえすれば、仕事を休んで数時間は眠れる」と必死で送迎していた。
だから、東京を離れて今の場所に引っ越したとき、保育園を離れることが一番つらかった。
この場所、この人たちを失っていったいどうやって暮らしていけばいいのか、途方にくれるほど心細かった。
それぐらい、保育園はずっと私の支えであり続けてくれました。
「自分への誇りを持つ」ってどういうことなのでしょうか。
当時の私は、自分への誇りを持っていたのでしょうか。
決して私は「自分なんて…」と、なにかと卑下するタイプではないように思います。
でも、そういうことじゃなくて、何ができるから、何を持っているから、何を成し遂げたから、そのことを誇りに思うというのでもなくて、もっともっと手前のところ、ただ生きているといったそれぞれの事実のもとに、誇りは存在すべきもののような気がしています。
それは当たり前のようでいて、とても脆く、見失いがちなものなのかもしれません。
今の私は、私の息子たちは、自分への誇りを持てるように育っているのでしょうか。
あのインタビュー映像を見ながら私に起きていたことは、私や私たちの誇りを支えようとしてくれた人がいたのだなという気付きによる衝撃と、行き場のよくわからない感謝による混乱なのかもしれません。
誇りを持たなくてもよい人なんていないのだと思います。
でもそれは、きっと一人では難しいことなのかもしれません。
だからこそ私はコーチングをやっているのかもしれないなと、ふと思いました。
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